横浜セントラルパーク歯科

【インプラントに歯周病!?】インプラント周囲炎が怖いとされる理由

インプラント周囲炎は、インプラント治療を終えた患者さまが絶対に把握しておくべき「天敵」です。天然歯でもたらされる歯周病以上に警戒しなければならない「怖さ」がありますので、インプラントをお使いの患者さまはぜひご確認ください。


インプラント周囲炎の5つの怖さ

インプラント周囲炎とは、天然歯で起こる「歯周病」がインプラントに対して起こったものです。一般的に歯周病も「怖い病」と紹介されますが、インプラント周囲炎の場合には更に輪をかけたリスクがございます。


1.歯周病の10倍のスピードで進行する

インプラント周囲炎は、通常の天然歯で生じる「歯周病」の10倍以上のスピードで進行すると言われています。これは、天然の歯に備わっている歯槽骨との間の「歯根膜」が存在しないという事情が関係しています。

歯根膜自体は噛み合わせの際にクッションのような役割を担いますが、この組織には細菌に対する免疫機能もあり、これがあるのとないのとで歯周病菌の侵攻プロセスに違いが出てくるのです。わかりやすい表現を使うと、堤防のある海岸と堤防がない海岸のような違いがあり、インプラントの場合には「歯根膜」の免疫機能が働かないため歯周病菌の侵攻が容易になってしまうのです。

2.痛みなく進行し、やがてインプラントを脱落させる

インプラント周囲炎では、本人が「痛み」を感じることはほとんどありません。歯周病の初期段階でもそうですが、歯周病菌は痛みをもたらすことなく歯周ポケット内で増殖していき、歯垢が固まることで歯石を形成します。

歯石が大きくなることで歯周ポケットが深くなっていき、やがて歯周病菌はインプラントを支えている歯槽骨にまで到達します。初期段階で気付けばインプラントを守れる可能性は高いのですが、「痛みなく進行する」という特徴から気づくのが遅れ、「歯茎からの出血」や「排膿」が酷くなることで発覚するケースが少なくありません。

こうなったときには既に歯周病菌が歯槽骨を溶かし始めていることも多く、治療が間に合わずにインプラント体が脱落するという結果になりやすいのです。

3.インプラント体の再埋入(リカバリー手術)は困難を極める

インプラントを埋め込む箇所は簡単に決定できるようなものではありません。顎骨周辺には大きな神経や血管などがあるため、この位置がベストという箇所を特定してインプラント体を埋入しています。このため、別の穴を開ければ良いというようなものではないことは容易に想像がつくと思います。

インプラントが脱落してしまったという事実が既にある以上、当初のオペ前と比較してある程度歯槽骨が痩せ細っている影響が考えられます。このようなことから、最低でも「骨を再生する処置」を施した上で再手術の可能性を検討していくことになります。「再埋入は絶対に不可能!」ということはありませんが、骨を補う処置などを含めるとリカバリー手術は容易なものでないという認識をお持ちください。

4.残っていた天然の歯まで失う可能性がある

インプラントが脱落してしまうということは、その前段階で「歯周病菌が歯槽骨にまで到達していた」ということを意味します。周りの天然歯の安定性についても危うくなっている可能性があり、そのままの状態だと他の歯まで抜け落ちてしまうケースもあります。 周りの天然歯の脱落まで行かなくても、歯がぐらつくことによって上下の歯の噛み合わせに悪影響が出るのが通常でしょう。できるだけ速やかに対策を講じないと、抜けてしまった穴部分の影響を受けて天然歯がそちらへと移動していってしまい、噛み合わせに強い不具合をもたらします。

5.糖尿病や心疾患を悪化させる可能性も…

歯周病菌は歯肉内の毛細血管を通じて全身に流れてしまうことがわかっています。歯周病菌は血管に入った後、身体の機能によって死滅するという経緯を辿りますが、歯周病菌の死骸が持つ毒素は残り血糖値などに悪影響をもたらします。具体的には、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するという影響が出るため、糖尿病を発症させたり悪化させる可能性があります。また、体内に流れた歯周病菌が心疾患をもたらすという報告もあります。


まとめ

当コラムでは「インプラント周囲炎の怖さ」を具体的に5つご紹介しました。もう一度簡単にまとめておくと以下のようになります。

 インプラント周囲炎の怖さ 

● 進行速度がとにかく早い

● 痛みがないため気付きにくく、処置が遅れればインプラントが脱落する

● 一度脱落すると、リカバリー手術で困難を極める

● 周囲の歯への悪影響も否めない

● 歯周病菌が全身に流れ、様々な疾患をもたらす可能性がある

最悪、「インプラントの脱落」という悲劇がもたらされるものであり、高額の治療費が無駄になってしまうだけでなく、その後の再手術なども考えていかなければなりません。インプラントが抜け落ちてから後悔しても手遅れですので、明確な症状がもたらされる前に直ぐに反応できるようなライフスタイルを維持しておく必要があると言えるでしょう。

具体的には、「定期メンテナンス」や「定期検診」を欠かさないことが大切です。もちろん、ご家庭でのブラッシングも念入りに行なっていただかなければなりません。適切なケアを怠らなければ10年、20年と長くお使いいただけるものですので、しっかりとケアしていく心構えを忘れないようにしてください。